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先の、 『空海と密教美術展』のエントリー で取り上げた、 空海筆の「聾瞽指帰(ろうこしいき)」のことをもう少し。 メモ的なものなので、面白いエントリーではないと思います。 ![]() 先のエントリーでも書いた通り、この書にはとても引きつけられました。 空海が生きたのは平安時代初期。 その前の時代である奈良時代の書は、 残されている写経を通じて知ることができるんですが、 奈良時代の文字は、一文字一文字をキッチリと丁寧に美しく書くタイプのもの。 文字そのものが目的、といった感じです。 書いた人のクセはそれぞれにありますが徹底的に抑えられている感じで、 文字はお行儀よく整然と並んでいて、 個性が踊るようなものもなければ自己主張的なものもありません。 例えてみれば、コップに最適な量の水が入っている感じ。 それに対して若き空海が書いた「聾瞽指帰(ろうこしいき)」は、 文字が紙面を踊るように展開されています。 文字はあくまでも手段でしかなく、 書きたいのは文字ではなくその文字によって表現される内容の方、 何が書いてあるのかはわからなくても、 空海その人が高ぶる気持ちに任せて筆を進め、文字を踊らせ、 紙面全体を使って自己主張をしているのが伝わってくる、 そうしたものが見事に出ている書面になっています。 例えてみれば、 コップから水が溢れているのにさらにどんどん水を差して溢れ続けてる感じ。 文字を我がモノにして自在に書き操れる先にある文字であり書である、 といった感じで、勢いで一気に書き進んでいったような、 力強くリズミカルな躍動感ある書です。 字は、おおらかでいながら力強く、 でも滑らかで、でも芯があって、でもよどむことなく流れ進んで展開してきます。 書かれている文字はクセがあります。 ただ、元々ものすごく字が上手くて、例えば 丁寧でカンペキな文字を書くことが目的ならそれは見事な字を書くだろう人が、 文字そのものを美しく書くことよりも、自分の中から湧いてくる文章を 一気に書き進めるために、乗りながら筆を進めている、そんな文字だと思います。 器用でバランス感覚がいいため、どんどんきれいな文字が書けるようになっていって、 自身の書く字が自分でも好きで、文字を書くのも好きで、 美しい文字を書くための修練も自発的にますます積んでいって、 それらを体得して、自在に操れて、それが楽しくて、ますます文字を書くのが好きで… そんな人が、一文字一文字を美しく書くためではなく、 内容を表現することを目的として、リズムに乗って、 緩急や強弱をつけ文字を自在に操りながら書いた書。 そうした、主張や勢いが文字となって紙面を躍りながら、 巻全体で人を圧倒的にひきつける雰囲気を漂わせる、 これがこの書の魅力だと思います。 書き上げたときも、のちのちまでも、空海本人も、 若々しく堅苦しさもなくいい感じで美しい、バランスの取れたリズムに乗った文字の感じと 伸びやかな美しさで進んでいく紙面の雰囲気が 気に入ってたんじゃないかと、勝手に想像しています。 文字は、上手い下手以外にその人そのものを表す と常々思っているんですが、 空海=字がうまい の先入観だけで見てしまうにはあまりにももったいない、 そうした空海の人物像の一端を感じるような書だと思います。 ランキング参加中。 よろしければクリックで応援お願いします^^ ※このブログはトラックバック承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
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